みなさんこんにちは!禁断 @J_kindan です。
さて、今回はこのお題を書きます!
「ミュージカルってどうして突然歌い出すの?」と、特にミュージカル慣れしていない人は、そう疑問に思う人がいるようです。
また、「ミュージカルって突然歌い出すのがなんか恥ずかしいよね!」という人もたまにいます。
「ミュージカルってどうして突然歌い出すの?なんか恥ずかしいんだけど!」という問題と疑問と、なぜそうなるのかの構造とメカニズムを日本一詳しく分析・解説するよ!

「ミュージカルってさぁ、突然歌い出すから恥ずかしいんだよね!だからあんまり見ぃひんわ!」
これね・・・
私も そう思います!(笑)
まぁ、恥ずかしくはないですが、面白いというか笑えます。
は? 観劇・ミュージカルブログを書いてる禁断が一体何を言ってるんだ!と、お叱りが飛んできそうですが、まぁ待ってください。
実はこういうことです。
ミュージカルにはタイプがある。私が好きなのは断然「オペラタイプ」
私が好んで見るのは、「台詞部分も全て歌う、オペラタイプ」のミュージカルです。
もちろん「突然歌う」と言われるタイプのミュージカルも見ますが、圧倒的に多いのは「オペラタイプ」です。これに慣れてしまうと、通常のミュージカルではやはり「急に歌い始めたなぁ!」と感じてしまうことがあります。
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オペラタイプのミュージカルとは
「オペラ座の怪人」「レ・ミゼラブル」「ジーザス・クライスト=スーパースター」など、基本的にずーーっと歌ってるミュージカルがめっちゃ好きなんです。
あ、これ。レミゼ以外アンドリュー・ロイド=ウェバーのヤツですね。はい、ALWのミュージカルは好きですし、彼の作品の殆どはこの「オペラタイプ」です。
オペラタイプは、普通のミュージカルなら台詞な部分も、全部メロディーが付くんですね。
「クリースティーヌがもどってきましたー♪」「いったいどこにいたんだいー♪」とか。そういうのです。
まぁ、こういうのもちょっと面白いっちゃ面白いんですけどね(笑) レミゼの「どうしたー悲鳴を聞いたー♪」もそうだし、「うるさいぞー♪」「わからんぞー♪」もそうですね。これ後ろに「♪」を付けるから余計にオモロイわ。
オペラタイプのミュージカルは、メインとなるナンバー以外の部分でも、ちゃんとメロディーが付きます。そしてそのメロディーというのは同じフレーズを繰り返し繰り返し何回も歌うのです。この繰り返しの中毒性がたまらんのですよねぇ。
RT if you’ve ever found yourself in the same situation as Éponine during this moment… pic.twitter.com/8AlByW6WWV
— Les Misérables (@lesmisofficial) 2016年8月28日
(@lesmisofficial レ・ミゼラブルオフィシャルTwitterより)
ミュージカル レ・ミゼラブルは台詞部分も常時歌になる「オペラタイプ」のミュージカルである
あ、この「音楽繰り返し中毒」のことについてはまた記事にしますね。
「ラヴ・ネヴァー・ダイズ」や「ウーマン・イン・ホワイト」なんかも基本そうですが、ちょっと説明クサイやつは台詞もまぁまぁ入ってるので、ちょっとアレなんですけど。それでも歌メインのミュージカルが好きです。
それにALWのミュージカルは、台詞部分を本当に「台詞」として喋っていても大抵オケは音楽を演奏しっぱなしです。伴奏というかBGMというかとにかく音楽は鳴りっぱなしですね、基本的には。オケの人休憩殆どできないという(笑)
ちなみにラブネバ、ウーマンは共通して似てるフレーズはいくつもあります。いや似てるのを通り越して全く一緒!というのもあります。笑
これはただ単にALWの「手抜き」ということではなく、彼の頭で鳴っているメロディーを具現化するのですから、どうしても似てくるのでしょうね。この2作品は製作時期も近かったですから。
また、完全なオペラタイプではなくても、「エリザベート」のように殆ど歌っている。というのももちろん好きです。エリザベートはオペラというよりはロック寄りですが。
ここまでは私が「好きで良く見に行くタイプ」のミュージカルです。
突然歌い出すミュージカルの代表例
で、私が結構「ププww」ってなるのは、こういうタイプです。
例えばディズニーミュージカルの「アイーダ」。
このミュージカルは結構突然歌い出す系の代表です。ゾーザーの歌のように前奏が鳴り出す場合もありますけど(まぁその「前奏が鳴る」というのもゾーザーの場合は結構面白んですけど)、「あなたーたちには、うばーえない!」と、怒りとともに突然歌い出すのは主役でありヒロインのアイーダです。
濱田めぐみさんの場合はかなり凝っていて、最初の「あな」までは台詞。「たーたちには」から歌に切り替えるというこだわりようでした。
実際、「たーたちには」から演奏も鳴りだすのでこれは正解といえばそうですね。
他のアイーダは皆、「あな」から歌にしています。
この歌は本当に芝居→急に歌が始まるので、ビックリしてしまうんですね。
あ、誤解のないように書いておきますがミュージカル「アイーダ」は大好きな作品なので、念のため。
台詞半分、歌半分ぐらいが分かれ道?
ミュージカル作品によっては、殆どがお芝居の部分(台詞メイン)で、歌は節目節目にしか歌わない。というものがあります。
例えば「ライオンキング」なんかは、歌よりもお芝居の部分は結構長いです。
「マンマ・ミーア!」は台詞の部分は多いですが、テンポよく歌が次々と始まりますし、台詞を喋っている間もノリのよいバンド演奏が鳴っているミュージカルです。
2016年に帝劇と梅芸で上演した「1789」も芝居から歌に切り替わるテンポが結構良いミュージカルです。これはダンステクノ・ロックですね。「1789」の音楽めっちゃ好きですよ。
2017年に日本キャストで初上演となる「ビリー・エリオット」も台詞は多いです。ただビリーの場合は歌を聞かせるミュージカルというよりは、圧倒的なダンスを楽しむタイプのものなので、見どころ的には随分変わってきます。
劇団四季のノートルダムの鐘は、台詞と歌は完全に分かれているタイプですが、歌の割合のほうが多く音楽を重視したミュージカルになります。
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この「芝居:歌」の割合にもよると思うんですけど、私の感覚でいうと芝居(台詞)が半分以上になると、歌を歌い始めた時に「突然感」が増すのかな、とも思います。
先ほどのアイーダの例のような、急に歌になっている というのもそう感じる要素のひとつですね。
歌い始める前に「予兆」があるから、実質「突然」ではないという細かい話
「予兆」というとアレですけど、歌の前にはいわゆる前奏が鳴り始めます。で、前奏が鳴るということは、その手前は音楽は何もなっていないんですよね。ALWのミュージカルは除きますよ、あのタイプは基本ずーっと音楽鳴ってるので。
通常の場合は、芝居部分は音楽が止まります。そして前奏が鳴り始めると「途中から音楽に合わせて歌い始める」パターンとなります。
そして前奏がない場合では、俳優がファーストトーンを取るための「チャラリーン」的なガイド音が鳴り、その後で歌い始めるパターンがあります。(その「チャラリーン」の音を聞いて、正しい音程で歌い始める、という意味。前奏がないと音程を外してしまうことがあるためガイド音が鳴る)
だから実際には「急に歌う」「突然歌う」というパターンは少ないんですね。何かしらの予兆は必ずあります。

ミュージカルでは、実際には「突然歌い出す」ということは殆どなく、かならず前奏が鳴るなどの「予兆」はある
ただ、台詞が多くなってくると、前奏が鳴り始めたら「あ、そろそろ歌い始めるんだな」というのがわかるので、芝居→歌に切り替わる。ということは目立ちますね。
そもそもなぜ、ミュージカルは歌を歌うのか
はい、これですね。実は「歌い出す」のには理由があります。
レナード・バーンスタイン(Leonard Bernstein)というアメリカのピアニストであり作曲家・指揮者がいました。この人は「ウエスト・サイド・ストーリー」など、アメリカミュージカルの初期作品の殆どを手がけてきた、いわば”ブロードウェイ音楽の父”の一人です。
[blogcard url=”http://www.leonardbernstein.com/″]
@LennyBernstein: Great musician, great TEACHER! https://t.co/68bkrHzCkm pic.twitter.com/qVnQLoce0q
— NatGeo Education (@NatGeoEducation) 2016年8月25日
ミュージカルだけでなく数多くのオペラも手がけていたバーンスタインは、オペラとミュージカルの違いについて、こう定義したそうです。
※バーンスタイン先生の口調はイメージです。
「歌と音楽によって物語が進むのはオペラ。物語(芝居)が進行した結果、登場人物の心境や感情を歌として表現するのがミュージカルである」
by レナード・バーンスタイン
おお!
もちろん、全てのミュージカルにこれがあてはまる訳ではないので、このバーンスタインの定義が絶対ではありませんが、これは一つの指針となりますね。
主人公やヒロイン、または悪役の感情が高ぶって極まった末に、それを歌にして表現する。という、「感情の高ぶり→発散(歌)」というのは一つのミュージカルのパターンになるようです。
ですから「突然歌い出す」理由はこの「ミュージカルの一つの定義」ということになるんですね。
これ、知らない人に教えてあげましょう!

「あ、もしもしあのねー、ミュージカルって感情が高ぶった結果歌うんだって!」「へーそーなんだ!知らんかったわー!」
じゃあなんで「突然歌い出すと恥ずかしい」んだろう
これはね、ただ単に一般の人は「ミュージカルに慣れていない」ということです。
言い切っちゃいますが、コレです。
”歌”ってミュージカル以外にも色んなシーンで歌います。
例えば、好きなアーティストのライブやコンサートの会場に行ったとします。当然、歌を聞きにいってるのですから、アーティストが歌い始めて「恥ずかしい」なんて思う人は絶対にいないでしょう。
またあるいは、好きなアイドルグループがテレビの歌番組に出演したとします。
最初はMCとなにやら近況をお喋りしたりしますよね。そしてアシスタントから「それではスタンバイをお願いします」という声がかかり、歌を歌うステージへと向かいます。そして「それではお聴き下さい」という前説があって、初めて歌が始まります。
これは、恥ずかしくないですね、決して。自然な流れです。
では絶対にそんなことはありえませんが、MCとお喋りしている最中に突然歌手が立ち上がり歌い始めたとしたら!
これはなんだか恥ずかしいですし、第一驚きますね。「なーにこの人急に歌っちゃってんの」と思いますし、”変”だとも思うでしょう。

コンサートやライブに出向いて「何この人歌ってんの恥ずかしい」なんて思う人は誰もいない
「これから歌いますよ」という予めの準備や心づもりがあって、初めて「歌を自然に受け入れられる」という構造が成り立っていることを、おわかり頂けたことでしょう。
では、実際に体感してみよう。「突然ミュージカルが始まって歌を歌われた時のなんとも言えない恥ずかしさ」
”フラッシュモブ”という、サプライズを演出する方法があります。
フラッシュ・モブとは
フラッシュモブ(英:flash mob)とは、インターネット上や口コミで呼びかけた不特定多数の人々が申し合わせて雑踏の中の歩行者として通りすがりを装って公共の場に集まり前触れなく突如としてパフォーマンス(ダンスや演奏など)を行って周囲の関心を引きその目的を達成するとすぐに解散する行為
ショッピング・モールで買い物をしていたら、普通の客だと思っていた人が急に歌い始めて「なんじゃこりゃ!」的なパフォーマンス・マーケティングの一種ですね。外国では盛んです。
これはもちろん驚きます。普通のオッサンの客やと思ってたら、実は「レ・ミゼラブル」のジャン・バルジャン役の人だった、ていうヤツですね(笑)
では、こちらの2つのYouTubeを見てください。
こちらは「レ・ミゼラブル」ポーランドキャストによる、ワルシャワのショッピング・モールでのフラッシュ・ボブ。
そしてこちら。横浜のショッピングモールで撮影された、映画「レ・ミゼラブル」DVD化記念フラッシュ・モブ”イベント”。
この2つの映像を見較べてみて、何か感じませんか?
早送りしたりせず、よーく見てください。。。
わかりましたよね?
はい、ポーランドの方はマジもんの「フラッシュ・モブ」です。本当のサプライズですね。かなり混雑したショッピング・モールの中で撮影されています。ちょっと混雑しすぎな気もしますが、逆にリアリティがあります。
居合わせた大勢の”本当の客”は「何事か」と振り返ったり、嬉しそうに笑ったりしていますね。
もちろん、日常の中に突然「非日常」が入り込んことによる驚きが大きいのです。
でも、なんだかこの映像、めっちゃカッコよくありませんか?
キャストはもちろん歌い慣れている実際に出演しているマジの俳優ですから歌めっちゃうまいですし、一部のお客さんはもうめっちゃ盛り上がって、最後は一緒に行進したりスマホで撮影したりしています。
みんな嬉しそうに笑ってるし、見ている側もなんか最後にはジーンと感動しちゃいます。
これが、フラッシュ・モブです。
ではもう一つの横浜の方はどうでしょうか。
まず、「フラッシュ・モブ”イベント”」とあるように、これは本当の意味でのフラッシュ・モブではありません。いわゆる”風”ですね。
ここに映っている人の大半は”仕込み”です。最初にコケた子どももそうだし、子どもを助ける老夫婦でさえも、そうです。
まぁ、お客”役”もいるのでしょう。日本の場合なら本当に知らないで居合わせた客を映すのであれば、顔にボカシがはいりますからね。後々うるさいから。
日本のフラッシュ・モブは恥ずかしくて仕方がない!
でね。問題は、
この日本のフラッシュ・モブの映像見てたらどこか不自然ということなんです。
一生懸命さは伝わります。レ・ミゼラブルが好きな人たちが集まっているという熱意は伝わります。
でも、ミュージカルに慣れている私でも、このフラッシュ・モブイベントは違和感を感じるし「恥ずかしい」と思います。あれ?私だけじゃないですよね。
このイベントに参加して一生懸命に演じた人には申し訳ない話ですが。ごめんなさいね。
映像では大成功しているように撮られているのは、そこに映っているのは皆「このイベントに参加した人たち」だからです。
本当のお客さんの反応は映しだされていませんよね。遠巻きからは見てますけど。
外国と日本のフラッシュ・モブの決定的な違いとは
ポーランドのフラッシュ・モブは「カッコいい」と感じて感動した。でも横浜のフラッシュ・モブは違和感を思ってしまった。この違いは一体どういうことなのでしょうか。
はい、決定的な違いはコレなんです!!
日本では、演劇もそうだけどミュージカルはそれほど浸透していない!という真実。全体的に見れば、ですよ。
だから、日本人が日常の中で「急に歌い出す」なんて非日常すぎて違和感あるし、恥ずかしくてたまらないんです!
そういう一生懸命に「演じている人、歌っている人」を見るのが恥ずかしくて仕方ないんです!!
ぜーぜー。
日本人独特の感覚、っていうのもあるかもしれませんね。「目立つ=恥ずかしい」と思っちゃう真面目で控えめな感覚といいますか。
この感覚こそが一般の人が思う「ミュージカルって歌うのが恥ずかしい」の構造そのもの
私を含め、ミュージカル好きな人は慣れていますので、劇場でミュージカルを見る分には「歌い出す」のは当たり前ですし「恥ずかしい」とか「なんで歌うんだ」なんてことは一切思いません。
だけど、このフラッシュ・モブの例は、いわゆる一般の人から見た「ミュージカルって急に歌い出してなんだか恥ずかしいよね」という感覚、構造そのものなのです。
※このフラッシュ・モブイベントの批判を目的とした記事ではありませんので、ご理解くださいね。
この帝劇レ・ミゼラブルのフラッシュモブ風PVぐらい、ガッチガチに仕込んでくれたら逆に好感が持てます。このPVは大好きです(笑)
「ミュージカルってなぜ突然歌い出すの?」問題:まとめ
「ミュージカルって突然歌い出すのが恥ずかしいから嫌いなんだよね」と、テレビで最初に言ったのは、タレントのタモリさんだと言われています。そのタモリさんの発言を元に広く一般層に広まった、という説があります。
これが本当だとすればミュー好きな人からすれば、「タモさん、余計なこと言ってくれちゃって!」と思うかもしれません。
まぁでも決して悪意があっての発言ではなく、「一般的に見てそう思う」という意味だったのかな、と今となっては思います。
先にも書きましたが「日本人独特な感覚」というのもあるかもしれません。
まぁでも!ミュージカル好きの皆さんは、これで一般の人からの「ミュージカルはなぜ突然歌い出すのか?」という疑問にも答えられるでしょうし、
「急に歌い出して恥ずかしいよね」と言う人の気持ちも、少しは理解できたのではないでしょうか。
そして、「ミュージカルは突然歌い出すから恥ずかしい!」と思い込んでいるみなさん!
こっち(ミュージカルファン側)にくれば、ぜーんぜん、恥ずかしくなんかなくなっちゃいますよ~
おいでおいで!
あっ
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あなたは大丈夫?観劇依存症かどうかを調べる12個のチェック事項と症状・克服法を解説
※この記事は2015年11月6日に初稿、後に再編して再公開しました。 みなさんこんにちは。禁断 @J_kindan です。 今日書く記事は、ミュージカルの情報や観劇レポを発信しているこの …