劇団四季ミュージカル『ノートルダムの鐘』感想・観劇レポ一覧

従順な田中彰孝カジモドと強い宮田愛エスメラルダに泣いた観劇レポ:2017年2月3日(金)・2月4日(土)昼公演の感想

キラキラな目でフロローを見つめ慕うフロロー大好きエスメラルダ大好きな田中彰孝カジモドのひたむきな演技に泣き、ハイトーンロングトーンをラクラク決めてくる歌唱力に大満足

さてようやくの登場となった田中彰孝さんは、日本初演キャスト3人目のカジモド役です。

以前に私は彼の代表役であるライオンキングシンバ、劇団四季ソング&ダンス55Stepsのヴォーカルパート、ドリーミングのチロー、ジーザス・クライスト=スーパースターのペテロ、マンマ・ミーア!のスカイなどで拝見してきました。

なかでも55Stepsでは、ディズニー映画版ノートルダムの鐘の「僕の願い」(今回の劇団四季ミュージカル版では「陽ざしの中で」)を披露していて、「すげー上手いな!もし劇団四季がノートルダムの鐘をやるのなら、田中カジモドいけるんじゃね?」と、当時から思っていました。

数年前に密かに思っていたことが後になって叶うのは嬉しいものです。

このツイートにも書いたように田中カジモドは、従順な感じでご主人様であるフロローに接するのかなと想像していました。

実際に観劇した田中彰孝カジモドはおよそ想像通り、ひたむきに主人(叔父)のフロローと、生まれてはじめて優しくしてくれたエスメラルダを愛する、純真で、どちらかと言えば陽の部分が強めの明るいカジモドでした。

田中彰孝さんのカジモドはやはり、ほかのお二人(海宝直人さん飯田達郎さん)とはまた違ったアプローチでした。

カジモドは「フロローが好き(嫌いではない)・フロローの言うことに従う」点はほかの2人にも共通しますが、特に田中カジモドは「フロローが大好き」で従順な姿勢はほか2人のカジモドよりも割増感があり、特徴が強調されていて、これもアリだと思いました。

まず田中彰孝さん演じるカジモドの基本姿勢ですが、結構顔を上げて台詞を話すことが多いので、顔がよく見え表情がよく伺えました。

これまでに海宝直人さんや飯田達郎さんで観劇した時には、カジモドというのは常に特殊な姿勢であることと、あまり顔を上げずに(特にフロローとの会話中)視線を下に向けていることが多いので、表情を見ることはあまりできませんでした。

(これは私が2階や3階から見ていることが多かったから。ということもあるかもしれません)

田中彰孝さんのカジモドは、もちろんカジモドの姿勢のままですが、フロローと話すときに積極的にフロローを見ている(目を合わせている)ので、必然的に顔を上げている時間が長いのです。

そして、よくフロローをよく観察していたことがとても印象的でした。

そうです。田中彰孝カジモドはフロローのことが大好きでとても尊敬しているし、先生であり父のような存在であるといえます。フロローのことを慕っているのは、もう間違いありません。

それはラストシーンでも顕著でした。「おまえのせいだ」と、フロローにはじめて「お前」と言う時にも、田中カジはフロローをしっかり見て言っていました。裏切られた感、失望が表情からよく見てとれました。

次に顔つきですが、田中彰孝さんが演じるカジモドは、基本的には顔はずっと歪めっぱなしでした。歌っている時もです。

声質は、それほどは潰さずに。そして割とゆっくりハッキリ話します。3人のカジモドの中では一番台詞が聞きとりやすかったです。一番劇団四季っぽい感じがしました。

「僕の、サンクチュアリだ」は、かなり低い声で言っていました。

次に汗について。田中カジモドからは凄い量の汗が常に出ています。海宝直人さんも飯田達郎さんもとても汗をかいていましたが、ふたりをはるかに上回る量です。

ずっと目に見えて汗がつぶになってポタポタ落ち続けているので、思わず汗を拭いてあげたくなるほどでした。

そんな田中カジですが、かわいらしい一面が伺えました。

「聖アフロディージアス」が言えないカジモドですが、田中カジは「聖アフロ…デュッデュ…聖…アーー…デュッヂュ」とかなりぎこちないので、フロローが思わず笑ってしまうのもうなずけます。

いや「デュッデュ」なんて言われたらかわいいから吹き出してしまうでしょう(笑)

また、2幕冒頭鐘撞き塔でフィーバスを匿うシーン。

フロローが「誰かと話していたのか?」と尋ねると、それはシラジラしい声で「はい、友だち(ガーゴイル)と」と言うのです。

畳み掛けるように「何か知っているんじゃないのか?」と質問するフロローにも「いいえ、僕は何も知りません」と、またもやとてもシラジラしい声と表情で話す田中カジ。

海宝・飯田カジモドの場合は、フロローにバレないようにオドオドビクビクしているのですが、田中カジの場合はここはとても堂々としていて、オドオド感は少なめ。でも、声が嘘っぽすぎてフロローにバレる…というヤツでした。

私は、あまりのシラジラしさ(わざとらしさ)に、「そりゃフロローにバレるわ!」と、思わず笑ってしまいそうになりました。いや、いいんですよ。こういう嘘の付き方もアリですね。

そして、エスメラルダを大聖堂から追い出した後のフロローの性教育(あえてこう言う)シーンで、「お前の父親がそうだった!」とフロローが言えば、田中彰孝カジモドは「父さん?!」と言ったあとで、「ペーッペーッ!」と汚いものでも吐き出すようにしていました。

これは何を意味するのかといえば、カジモドは父(ジェアン)のことをあまり良く思っていない、嫌いであるということがわかります。ツバをはくぐらいですからね。

これ(カジモドのツバをはくような仕草)は、海宝直人さんと飯田達郎さんはしていませんでしたが、北米プレミア・オリジナル・キャストのマイケル・アーデンがやっていたものと同じです。

カジモドは生まれてすぐに父のジェアンが死に、クロード(フロロー)が引き取りました。だから、カジモドにはジェアンの記憶はないのです。

フロローがカジモドに、父ジェアンのことをどのように説明していたのかはわかりませんが、良い印象を与えるようなことは言ってなかったのでしょう。あのシーンで引き合いに出すぐらいですから。

田中彰孝カジモドは「父」と聞いただけで条件反射的に嫌悪感を出していました。

これはハッキリとしていて、わかりやすかったです。

そんな田中カジモドですが、もちろんエスメラルダのことも大好きで仕方ありません。

「ヘブンズライト(天国の光)」では、エスメラルダを思い目を細め、腰掛けている階段の手すりに顔をずっとスリスリしていたので、これはかなり好きなんだなということがわかりました。好き好き~ってしてる感じです。

それだけに、ラストのエスメラルダ救出からはもう涙涙の展開に…

フィーバスの代わりにカジモドがエスメラルダを鐘撞き塔から屋外へ運びます。

エスメラルダをそっと地面に置いた後、田中カジはエスメラルダの頬をスッとなでるようにしながら「エスメラルダ…エスメラルダ…」とつぶやいていました。

こんなの見せられたら号泣しますよね。はいしました。

さて肝心の歌声ですが、3人のカジモドの中ではキー的に田中彰孝さんが一番カジモドに合っているのではないかな?と感じました。特にカジモドの難関ポイントともいえるハイトーンはラクに出しているなという印象です。

圧巻だったのは「アウト・ゼア(陽ざしの中へ)」です。

間に息継ぎを入れずに歌いきるロングブレスと、そこから続けての歌を長く引っ張るロングトーンは圧巻です。

そしてカジモド最高音の「高いシのフラット」が存在する「メイド・オブ・ストーン(石になろう)」。

まず、中低音から揺らしの強いビブで攻めるタナカジ。

田中さんって高音域に強いイメージでしたが、意外にも中低音域もパワフルな歌い方で攻めます。

最初(歌途中)のロングトーンはスコーンと一発で突くように音をとらえ、しっかり伸ばしていました。

そしてラスト、怒涛の4連発ロングはバッチリです!ブラボー!

いや、どんな肺活量してるんですか。通常の人ではムリです。途中ハイトーンも入りますからね。

熱唱とはこのことですね。

カジモドナンバーはどれも難曲なので、あれだけパワフルな歌をまず歌いきるだけでも大変なこと。

田中彰孝さんのカジモドも確かな歌唱力で聴かせてくれたので、良かったです。

カーテンコールでは、あの汗ですからシャツが全てずぶ濡れ状態になっていました。

大きな拍手を贈る観客をゆっくりと見渡し、反応や感触を確かめるように、しっかりとお辞儀をしていたことが印象的でした。

もちろん、スタンディング・オベーションです。

いやぁ良かったですよ!田中彰孝さんのカジモド!

田中さんは一人だけ遅れてのスタートになってしまいましたが、そんなことすら感じさせない熱演熱唱で、大変感動しました。

劇団四季でもベテランの域に入りますもんね。カジモドもシンバのように長く演じてほしいです。

そしてやっぱり、海宝直人さんや飯田達郎さんとは違うカジモドとして演じていたことが良かったです。

ノートルダムの鐘は演技や解釈について、ある程度演者に委ねられている部分があり、キャストによって演技が微妙に演技が異なってきます。

3人のカジモドにはそれぞれ特徴があって、演技や解釈が部分的に違っているから、三者三様で楽しめるんですよね。

ああ、田中彰孝さんはカジモドはああやって演じるんだ、エエやんエエやんって思いましたし、ひたむきでちょっとカワイイところがあって、フロローとエスメラルダのことが大好きで・・・それであの怒涛のラストですから・・・

ああ、また泣けてきちゃった。

 

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