※この記事は2016年7月3日に初稿し、後に再編して再公開しました。
みなさんこんにちは!禁断 @J_kindan です。
今回は劇団四季ミュージカル『オペラ座の怪人』について書きますね。
劇団四季のオペラ座の怪人の芝清道ファントムはワンダリング・チャイルドで音を外している?!いや実はそういうパターンもあるから解説するよ
2016年8月に、新名古屋ミュージカル劇場での上演を終了し、2017年3月からは横浜・KAAT 神奈川芸術劇場<ホール>での上演を開始した、劇団四季ミュージカル『オペラ座の怪人』。
名古屋公演に出演していたファントム役、芝清道さんが歌う「ワンダリング・チャイルド」が ちょっと変わっているという話を耳にしたのは2016年のはじめごろだったと記憶しています。
ワンダリング・チャイルドってわかりますよね?
クリスティーヌがお父さんのお墓に行ってソロ・ナンバーを歌った後、お墓の中に隠れていたファントムが出てきて「ここへおいで私の愛しいクリスティーヌ」と歌うところから始まるアレが、ワンダリング・チャイルドになります。
2004年映画版だとこのシーンですねー!ジェラルド・バトラー、このシーンではラウルに負けるけど、やっぱりかっこええわ。
劇団四季版だと、手前の “Wishing You Were Somehow Here Again”(クリソロ) から “Wandering Child…/Bravo, Monsieur…!” までを通して「墓場にて」という タイトルになっていますね。
最後の「ブラボームッシュー」っちゅうのは、怪クリデュエット終わってからの「ここだーエンジェルオブミュージーーック」から「お前たちふたりに宣戦布告だ!(シュポッ)」というところまでです。
で、どうも 芝さんが違う歌い方をしていると言われているのはこの部分。
「エーンジェルオブ、ミュージック、もういちど、ふたーりはー、とーもーにー♪」
クリスティーヌと共に歌う部分ですが、芝さんは ここをどうやら 違うメロディで歌っているらしいと。
ツイッターでは「芝さんは勝手にアレンジしている」「芝さんは自由に歌っている」などという噂?が立ちました。噂というか、今でもそうつぶやく人がいます。「不協和音」「なんかヘン」という意見もありました。
ふむふむ。
実はそのメロディーもアリ!日本で歌ったのは芝怪人が初
実は、劇団四季の歴代ファントム役が歌ってきたメロディーというのは、元々、初演時のメロディーそのままなのです。
もちろん、それがスタンダードなので、そのまま歌っていてもOKです。何ら問題はありません。
スタンダードなメロディーは、ファントムとクリスティーヌとはユニゾンで(同じメロディーを男性と女性の上下パートで合わせて)歌うというパターンですね。
ワンダリング・チャイルドの ”アレンジバージョン” とはどんなものなのか
実は 同じ「ワンダリング・チャイルド」のシーンで、ファントムのメロディーが変わってしまうという もうひとつのパターンがあります。
それはロンドン、ブロードウェイ、ハンガリー、新演出版などで「ワンダリング・チャイルド」中にラウルが乱入し、ファントムとクリスティーヌのデュエットではなく ラウルも入った 3人で歌う・・・というパターンが存在するのです。
わかりやすいところで言うと、ラミン・カリムルーとシエラ・ボーゲスが出演した 25周年記念公演 in ロンドンも ラウル乱入パターンです。日本のオペラ座の怪人しか知らない人は「ラウル入ってくるの早くね?!」と驚いたことでしょう。
「なにあのラウルの人カッコいいわ!キャー」と25周年ラウル役俳優 ハドリー・フレイザーに恋に落ちた人 もいらっしゃいましたね。
参考:25周年記念inロンドン ラウル役 ハドリー・フレイザー(クリスティーヌはシエラ・ボーゲス)
そらこんなラウルきたらホレまっせ!
海外では あの「ラウル乱入パターン」が主流になっているんですね。
その場合に 芝さんが歌うようなメロディーに変化します。
なぜファントムの歌が乱れるのか?!突然ラウルが割り込んできたから動揺しているんだよ!
このラウル乱入パターンというのは、元々のファントム+クリスティーヌの歌に、文字通りラウルが割り込んでくることになります。
で、ラウルはファントムのジャマをするように被せて歌ってくるし、変に違うメロディーを歌うので、まぁファントムからすれば、ラウルの歌はかなりジャマな存在になります。いってしまえば、クリスティーヌとのデュエットには ラウルの歌は異物であり、不必要なのです。
では、どの段階でラウルが割り込んでくるか と言えばここからになります。わかりやすいように日本版の歌詞を引用して説明します。
ラウル乱入パターンのワンダリング・チャイルド導入部分
(バイオリンの音色鳴って怪人墓から登場)
怪人「ここへおいで・・・」
クリ「エンジェルかしらそれとも・・・」
怪人「わすれたのか!」
クリ「エンジェルの声がきこえる・・・」
怪人「ここへおいでクリ・・・」
(ラウル乱入)ラウル「(怪人の歌にかぶせるように歌う)そのオッサンのところに行っちゃいけないよ~」
怪人「私のもとへ」
ラウル「(怪人の歌にかぶせるように歌う)そのオッサンについていったら危ない目にあってガタガタ震えるよ~」
クリ「震えているのよ」
怪人「君の」
クリ&怪人「その心!」
ラウル「(怪人の歌にかぶせるように歌う)今すぐそのオッサンから心を離して僕と一緒に帰るんだよ~」
※ラウルの歌詞はイメージです
と、ラウルは見事に、ファントムの歌にかぶせるようにして アツく歌うのです。
ファントムとラウルの歌声がぶつかりあい、交錯する!
で、その後はですね。
件の「エーンジェルオブミュージック」に続くのですが、当然のようにラウルも歌い続けます。
ラウルはクリスティーヌとファントム ふたりのメロディーラインとは明らかに違うところをかぶせるようにして歌うので、ファントムとラウルは歌で交錯する形になります。歌でぶつかり合い(男のたたかい)を表現しているとでもいいましょうか。
(クリスティーヌは催眠術にかかっているので、まだラウルには気づいていない段階)
もうラウルの歌がうるさくて動揺し 冷静さを欠いてしまったファントムは、クリスティーヌと音を合わせて歌うユニゾンではなく、ラウルに歌い負けないように声を張り上げる様にして歌う(クリスティーヌと音を合わせたいのに動揺しているので音が上がってしまう)・・・という展開になるのです。
なんかアツいでしょ。ええでしょ。
ラウルはクリの目をさまさせようとして、あえて全く違うメロディーを歌います。
ファントムは、ラウルの歌がクリに届かないように声を張り上げる様に(上ずったようにして)歌うのです。
私はコレ、めっちゃ好きです。
ワンダリング・チャイルド、ファントムパートのメロディーはコレ
では実際に、メロディーとしてはどうなるのか 違いを記しておきましょう。
譜面上はファントム通常(従来)バージョン(クリスティーヌも同じ)。
譜面下はファントム新(アレンジ、3重唱)バージョンです。
▼こちらは実際に音が流れます。URLをクリックして再生ボタンを押してみてください(音量注意!)
いかがでしょうか?
これだとどういうハモリになっているのかもよくわかりますね。参考にしてください。
色んなワンダリング・チャイルドのパターンがあります
もっとわかりやすいように、実際の舞台シーンのワンダリング・チャイルドの映像を紹介したかったのですが、YouTubeには公式のものはひとつもなかったので、こちらには貼りませんでした。
「Wandering Child」と入れて検索すれば色々でてくるので、興味があれば覗いて、実際に聴いてみてください。
ロンドンではラウル乱入は必ずで、ファントムは ほぼ間違いなくこのアレンジのメロディーを歌います。
ただ、実際は譜面に書いたような綺麗なメロディーではなく、怒鳴りつけるようにアツく歌うので、メロディーとしては少し聞き取りにくい(ラウルも歌っているので音を取りにくい)かもしれません。
ラミンのファントムはまさにソレですね。(むしろそれがカッコいいのですが)
ロンドンの、ラミン(怪人)vs サイモン(ラウル)のワンダリングチャイルドを聴きましたが、歌というよりは怒号でした。でも、それだけアツイ舞台を生で見てしまったら、絶対に忘れられない記憶になるでしょうね。
ブロードウェイのノーム・ルイスは 前半は通常バージョン、後半はアレンジバージョンを歌っていました。(YouTubeで確認)
また、ラウル乱入パターンでも冷静さを保って 通常バージョンで歌うファントムもいました。
ラウル乱入パターンを取り入れていないカンパニーでも、アレンジバージョンでアツく歌うファントムもいました。芝さんはソレですね。ラウルはいないけど クリスティーヌに向けてアツく歌うファントム。もう、滾っている感じがしていいですね。
ワンダリング・チャイルドの旋律は ファントム俳優によってさまざまだということが今回の調査でわかりました。歌いやすい方を選べるのかな?
まとめ:
ところで、ワンダリングチャイルドという呼び方は、日本では「墓場にて」の印象が強くてあまり馴染みがなかったのですが、ラミン&シエラが初来日した時に、WOWOWで披露したのがワンダリングチャイルドだったんですね。
ラミンが「ワンダリングチャイルド歌うよ」と言っても観客はポカンとしていて。
しかしその歌声の素晴らしかったこと!もちろんラミンはアレンジバージョンの方で歌ってくれました。(ラウルはなしで)
目の前でそんな凄い歌を聴いたもんですから、スタジオのお客さんは号泣していましたね。そりゃそうでしょうあんなの聴いたら泣くわ。それもYouTubeのどこかにありますので、一度見て(聴いて)みてください。
さて、芝さんのワンダリングチャイルドですが、オペラ座のイベントで「ワンダリング・チャイルドはロンドンの譜面を再現」と、芝さん本人がお話ししていたとのこと。
私は名古屋初日以降、名古屋公演には見に行かなかった(初日はまだ通常メロディーで歌っていた)ので芝さんがどんな風に歌っているのかは実際には聴いていませんが、「ロンドンの譜面」ということはコレで間違いないと思います。
もしぜーんぜん違っていたら教えて下さい(笑)
日本のオペラ座の怪人で、このアレンジメロディーを歌ったのは芝さんが初でしょう。
芝さんはジーザスの時も、海外版のように「群衆と一緒にホサナを歌うジーザス」を再現していました。後にやめちゃったので演出家の注意が入ったのかどうかは不明ですが。
でも、海外版のスタンダードを積極的に取り入れようとする芝さん、好きですよ。
で、折角日本のファントムが このアレンジバージョンでアツく歌っているということですから!
劇団四季さんもそろそろ「ラウル乱入バージョン」に変えちゃってもいいんじゃないですか? どうでしょうか、北澤スーパーバイザー様!是非ご検討よろしくお願いいたします。
アツいアツいワンダリング・チャイルド、日本でも見たい(聴きたい)ですね。
▼ ▼ ▼
追記:劇団四季版でも2017年横浜公演より、墓場3重唱バージョンが導入されました!
この記事は当初2016名古屋公演の時に書いたものですが、2017年横浜公演より墓場3重唱が導入されました!
現在、佐野正幸ファントム、高井治ファントムとも、「上げ」の旋律で歌っていると聞いています。くぅー!早く生で聴きたいぜ!
(私が観劇した横浜公演2日目(高井治ファントム)は3重唱ながらもまだ以前のユニゾンの方を歌っていました)
横浜公演からはこの3重唱だけでなく変更点は多数あります。詳細はこちらの記事を確認してください。めっちゃアツくなっていますよ!
-
-
劇団四季オペラ座の怪人感想 2017横浜公演からの演出変更点について解説
みなさんこんにちは!禁断 @J_kindan です。 劇団四季オペラ座の怪人2017横浜公演(KAAT神奈川芸術劇場<ホール> 2017年3月25日開幕~8月13日千穐楽)の開幕2日目を観劇してきまし …
-
-
劇団四季オペラ座の怪人感想 レジェンド高井治ファントムの復活と極上の横浜オペラ座に酔いしれた観劇レポ
pic.twitter.com/wut3AqxB1B — 禁断先生 (@J_kindan) 2017年3月26日 みなさんこんにちは!禁断 @J_kindan です。 劇団四季オペラ座の怪人横浜公演( …
-
-
劇団四季オペラ座の怪人Think of Meのキーをロンドン仕様に変更 キー上げ解説
www.shiki.jpShiki Errorhttp://www.shiki.jp/navi/news/renewinfo/028546.html みなさんこんにちは!禁断 @J_kin …
-
-
劇団四季オペラ座の怪人仙台公演チケットの取り方 値段と発売日は?正規チケットを安全確実に予約購入する方法まとめ
みなさんこんにちは!禁断 @J_kindan です。 劇団四季ミュージカル『オペラ座の怪人』仙台公演(東京エレクトロンホール宮城:2018年10月22日(月)開幕~2019年1月14日(月・祝)千穐楽 …
関連記事:
-
-
劇団四季オペラ座の怪人 指輪の謎に迫る
※この記事は2015年10月15日に初稿し、後に再編して再公開しました。 YouTubeは2004年映画版オペラ座の怪人、ファントムがクリスティーヌの首からぶら下がった指輪を引きちぎるシーン &nbs …
-
-
【初心者向け】劇団四季オペラ座の怪人ってどんなミュージカルなの?あらすじ・登場人物・豆知識・わかりにくい点など解説
みなさんこんにちは!禁断 @J_kindan です。 今回は日本では劇団四季が上演しているミュージカル『オペラ座の怪人』(アンドリュー・ロイド=ウェバー作曲・製作のミュージカル The Phantom …
劇団四季オペラ座の怪人公演情報
京都公演:京都劇場 2017年12月27日開幕~2018年5月20日千穐楽
静岡公演:静岡市民文化会館大ホール 2018年7月21日開幕~9月17日千穐楽
仙台公演:東京エレクトロンホール宮城 2018年10月22日開幕
オペラ座の怪人のチケットを検索する (チケットぴあ)
作曲:アンドリュー・ロイド=ウェバー
作詞:チャールズ・ハート
演出:ハロルド・プリンス
振付:ジリアン・リン
美術:マリア・ビョルンソン
原作:ガストン・ルルー(小説「オペラ座の怪人」より)
日本語台本/初演日本版演出:浅利慶太
演出スーパーバイザー:北澤裕輔