劇団四季リトルマーメイドは全キャスト入れ替えで公演再開!アラジンに続き危機を救った「複数キャスト体制」とは?

劇団四季が定期的に実施しているPCR検査にて、出演俳優一名が新型コロナウイルス感染症の陽性が確認されたことで、一時休演の措置をとっていた劇団四季のミュージカル「リトルマーメイド」は、保健所の指示に従い適切に対応を行った上で、全キャスト24名を入れ替えて公演を再開することを発表しました。

全キャストとは、プリンシパルキャスト11名(アリエル役、エリック役、アースラ役、トリトン役、セバスチャン役、スカットル役、グリムスビー役、フランダー役、フロットサム役、ジェットサム役、シェフ・ルイ/リーワード役)と、アンサンブルキャスト13名の合計24名で、大所帯とも言えるカンパニーを丸ごと入れ替えます。

劇団四季では昨年10月にもミュージカル「アラジン」において、全キャスト入れ替えの対応を行い公演を再開しました。

これは「複数キャスト体制」を徹底している劇団四季だからこそできた対応です。他の劇団では絶対に真似ができないことであり、このような「離れ業」とも言える、全キャスト入れ替えの対応ができるのは、世界でも劇団四季のみでしょう。

 

劇団四季の最新キャスト情報はこちら!

【毎週更新】劇団四季今週のキャストは?公演別出演予定キャスト&キャスト変更チェック
【毎週更新】劇団四季今週のキャストは?公演別出演予定キャスト&キャスト変更チェック

おしらせ 旧So-netブログ時代(記憶が曖昧ですが2007年頃から始めたと思います)から約17年程、毎週続けてまいりました【劇団四季のキャスト変更チェック】は、2024年8月12日の更新を持ちまして …

続きを見る

 

リトルマーメイドとアラジンの危機を救った!劇団四季の「複数キャスト体制」とは?

プリンシパル、アンサンブル全役「複数キャスト体制」の劇団四季

劇団四季では複数のカンパニーが存在します。現在ですと、今回全キャスト入れ替えの対応がとられた「リトルマーメイド」「アラジン」の他に、「ライオンキング」「キャッツ」「オペラ座の怪人」「劇団四季 The Bridge ~歌の架け橋~」などがあります。

これら全てのカンパニーにおいて「複数キャスト体制」が取られています。(当初より期間限定上演前提で、実質シングルキャスト体制の新作ミュージカル「ロボット・イン・ザ・ガーデン」などは除きます)

「オペラ座の怪人」を例にとってみますと、当サイトで取り纏めている稽古場キャストの記事をご覧頂くとわかりますように、各役において複数のキャストが存在します。キャストが複数いるのは役付きのプリンシパル(メイン)キャストだけではなく、アンサンブルも含めて全役です。

「オペラ座の怪人」の場合はプリンシパル10名、アンサンブルは21名。合計31名となり「リトルマーメイド」や「アラジン」よりもさらに大所帯となります。単純に各役2名ずつだとしても62名ですし、実際には一役に3名・4名キャストがいる役もあり、勉強キャストも含めるともっとたくさんのキャストがいるという事です。

ではなぜこんなにたくさんのキャストがいるのかと言うと、劇団四季ではロングラン公演が前提となるため、基本的には全役、キャストが複数(少なくとも2名以上)いなければ、公演が続けられないことが理由となります。

舞台に出演している俳優が怪我をしたり、病気で体調不良になるなど、急に舞台に立てなくなった際に対応できるように、同じ役を演じることができる別の俳優がいつでも舞台に上がれるように、常にスタンバイをしている状態ということです。

もちろん「複数キャスト体制」とはいえ、誰でも適当にキャスティングされるわけではありません。業界の中でも一際厳しいことで有名な四季の座内で、ひとつの役を射止めるには相当な努力と実力が必要で、それでもなかなか役を貰えない大変厳しい世界です。そんな中で役ができる複数の俳優は、皆同じレベルを保っているということ。「2軍」「3軍」などというグレード分けは、基本的にはありません。

また、劇団四季では俳優のスター制を取っておらず、作品そのものを主体に売り出す劇団(作品主義)ですから、特定の俳優が休演しても公演はストップしません。今回のように別のキャストにバトンタッチして公演が続きます。そのような対応がいつでもできる事が「複数キャスト体制」を敷く、劇団四季の最大の強みとなります。

今回の「リトルマーメイド」や「アラジン」のように、全員が交代というのは異例の事態ではありましたが、それでも対応ができるのは、「複数キャスト体制」を敷く、劇団四季ならではのことです。

 

日本の公演はシングルキャストが基本

それでは、劇団四季以外のミュージカル公演を行う製作会社では、どのようなキャスト体制が敷かれているのか説明します。

例えば、大手の東宝が2年に1回ロングラン公演を行う大型ミュージカル「レ・ミゼラブル」は、アンサンブルを含む全キャストがダブル(2名)以上の複数キャスト体制となっています。「ミス・サイゴン」も同じです。

大手ホリプロのミュージカル「ビリー・エリオット」のアンサンブルには、複数役を演じ分けられる「スウィング」のキャストがおり、ロングラン公演においてもローテーションが可能な体制が取られています。

しかしこれらは、海外オリジナルプロダクションのキャスト体制方針に沿った対応(厳密に言えば海外のキャスト体制とは少し異なりますが、日本の公演方針にも対応できる極めて近いキャスト体制)となり、日本の公演では稀なケースです。

例えば人気ミュージカル「エリザベート」では、プリンシパルこそダブル以上の複数キャストですが、アンサンブルはオールシングルで、100公演程の長期公演においても同じ役を一人の俳優が演じています。

何もなければOKですが、何か起きた場合には代わりに演じるキャストはいません。

日本のミュージカルや演劇の公演ではシングルキャストが基本であり、今回の「リトルマーメイド」や「アラジン」のような事態がもし発生してしまえば、全キャストを入れ替えて対応することは極めて困難になるでしょう。

 

次のページへ >

-アラジン, コラム, リトルマーメイド, 劇団四季
-