映画キャッツ感想:ミュージカル版との違いやキャラクター・ストーリーを解説
ジェリクルの母であり神のような存在!オールドデュトロノミー
舞台版では男性キャラクターですが映画版では女性となり性別をも超越した長老猫・オールドデュトロノミー(ジュディ・デンチ)。
デュト様が女性になるの?と最初は驚いたのですが舞台版では初心者だと見分けがつきにくい劇場猫ガスと並んだ時に、映画では女性と男性の並びになるのでバランスとしても良かったと思います。二人が何度か目を見合わせる場面もあり以前から交流があったのかもしれません。
日本の感覚ではそれほど馴染みはないことですがキャッツは実は宗教色が強い作品。オールドデュトロノミーはジェリクルキャッツにとっては絶対的な神のような存在として登場します。
他のレビューでは「宗教じゃないのか怖い」なんて書いてありましたが宗教はある意味正解です。慈悲深いオールドデュトロノミーがまるで母のようにジェリクルたち(子)を見守っていますし、猫たちにとっても絶対的なリーダーでありオールドデュトロノミーを尊敬し心の拠り所にしていることは間違いありません。
舞台版のオールドデュトロノミーは長老っぽくボロッボロの毛皮をまとっていますが、映画版のデュト様は割とセレブリティな高級なお毛皮をお召しになられてございました。
他のキャラクターもそうですが映画キャッツは舞台版にはない台詞を入れることでキャラクターがより確立されたものとなっています。
映画キャッツではオールドデュトロノミーの慈悲深い台詞が聞けることでキャッツのストーリーがよりしっかりと方向づけされたように感じました。
ラストナンバーの「ザ・アドレッシング・オブ・キャッツ」(猫からのごあいさつ)では舞台版ではオペラ歌唱で朗々と歌い上げるオールドデュトロノミーですが、映画版では語りかけるように歌っていました。舞台版にはないラストシーンの台詞もとても良かったと思います。
指導もするし食べちゃうおばさん猫!ジェニエニドッツ
昼間はぐうたらな家猫だが夜になると活発になるおばさん猫ジェニエニドッツ(レベル・ウィルソン)。
舞台版ではねずみに子守唄を歌ってあげたりごきぶりに指導して掃除をさせたりするジェニエニドッツですが、映画版では主に餌にすることを目的として飼いならしているような印象でした。
おばさん猫のコミカルさとナンバーの楽しさは継承しつつもまぁ歌って踊りながら食べちゃいますので、そこは苦手な方は少し鑑賞注意といったところでしょうか。(リアル猫も食べちゃうそうですが)
舞台版では主にマンカストラップとスリーガールズがコーラスを付けて歌いますが、映画版ではねずみたちがコーラスを付けています。
ジェニエニおばさんは自ナンバーの後、バストファージョーンズやラム・タム・タガーの悪口を言っていたのが面白かったです。特にバストファージョーンズのことは嫌っている様子でしたが、あることがきっかけで互いに協力するようになります。
哀愁漂うけど元気なおじいちゃん!劇場猫ガス
かつて大御所の俳優猫だったアスパラガス(イアン・マッケラン)は哀愁感が漂うおじいちゃん猫。
しかしガスが舞台に立つことを楽しみにしている猫たちが見守る舞台に一度あがるとどんどんと活力を取り戻し、全盛期の頃を彷彿とさせる口上をユーモアを交えて述べてゆきます。
舞台版ではまったく元気がないガスに付き添っているジェリーロラムという雌猫がガスの紹介をし彼の功績を讃えますが、映画版では終始ガスが一人でパフォーマンスをします。そして意外に元気なおじいちゃんです。グロールタイガーをやっつけてしまいますし。
舞台に立つ直前、舞台袖でぴちゃぴちゃと音をたてて猫皿に入ったミルクを飲んでいたガスはなかなかのシュールでした。まぁ猫だからいいんですけどイアン・マッケランがミルク猫のみですからね。ガスを呼びに行ったミストフェリーズも少し気まずそうにしていました。