劇団四季ミュージカル『ノートルダムの鐘』感想・観劇レポ一覧

こちらの記事ではこれまでに公開していた、劇団四季ミュージカル『ノートルダムの鐘』の過去の観劇感想・観劇レポを集約しております。

当時の感想をほぼそのまま再掲載いたしますが、一部記述において情報が古くなっており、現在の演出や演技プランとは相違がある場合がございます。予めご了承くださいませ。

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更新情報

2020年6月25日更新:

  •  複数の記事を取り纏め集約いたしました

 

劇団四季ノートルダムの鐘観劇感想・観劇レポ一覧

ネタバレ注意!

観劇感想・観劇レポにはいたるところにネタバレの記述がございます。一切何の情報も得ずに劇団四季ノートルダムの鐘を観劇したい方は充分にご注意ください

 

目次

 

2018名古屋公演からの演出変更点について解説 観劇レポ:2018年9月22日(土)・9月23日(日)・10月8日(月)の感想

劇団四季ノートルダムの鐘2018名古屋公演からの演出変更点を解説!

今回、ノートルダムの鐘2018名古屋公演から演出の一部が変更になった経緯を始めに説明しておきます。

これは名古屋公演の開演前に、オリジナル・クリエイティブ・スタッフによる作品メンテナンスを施した稽古が行われたことによるものです。

https://www.shiki.jp/navi/news/renewinfo/031149.html
https://www.shiki.jp/navi/news/renewinfo/031149.html

www.shiki.jp

↑ こちらですね。公式サイトでも紹介されています。演出や振付に関してオリジナルからの変更の指示があったということです。

ではなぜそんなことをするのか?という話なのですが、ノートルダムの鐘日本版の初演は2016年でしたが、その後にもドイツ等で公演が行われまして、公演が重なる度に細かなチューンナップが施されていたのです。

これは海外のミュージカル公演ではよくあることで、新しい公演地へスタッフが乗り込んだ際に、その場で新しいエッセンスを足して取り入れて、どんどん新しいバージョンを作り込んでゆく…というスタイルです。

「レ・ミゼラブル」や「ミス・サイゴン」はもろそのやり方ですし、最近の劇団四季の作品で言えば「オペラ座の怪人」「ライオンキング」「キャッツ」が最新のバージョンに刷新されましたね。

劇団四季版のノートルダムの鐘は、2016年時点の演出のまま東京~京都~横浜と上演しまして、名古屋が開く前にスタッフが入ってきましたので、演出により細かな変更を施した。ということになります。

スタッフは、劇団四季キャストの稽古の出来栄え(横浜クオリティ)には大層喜んだそうです。

横浜公演は本当に素晴らしくて、2016年東京初演から京都を経て、まさに集大成とも言える熱い大舞台でした。会場のKAATは最高に良い劇場でしたし、私も遠方だったというのに何度も通ってしまいました。

その横浜クオリティを全て潰してゼロにしたわけではなく、横浜クオリティ+名古屋からの新要素が加わった、そんな変更だと思って間違いないと思います。

ようするに、また相当良くなっている!ということを強調しておきます。ノートルダムの鐘の名古屋公演、未見の方は見たほうが良いですよ!

前置きが長くなりましたね。それでは、ノートルダムの鐘名古屋公演からの変更点について書いていきます!

 

奇跡御殿でのクロパンは○○っている

クロパン・トルイユフーはジプシーの王様で、ジプシーの隠れ家 ”奇跡御殿”のボスです。さらに1月6日は、”道化の祭り”を取り仕切ります。

今回の名古屋公演では、クロパンは1幕 ”道化の祭り”(トプシー・ターヴィー)では、かなりハイな状態でした。

まぁこれまでもトリッキーではありましたが、更にぶっとんでいたという印象。シャウトも多様します。

エスメラルダがダンスで稼いだコイン(エスメにメロメロになった街の男達が投げ入れた硬貨)をエスメと奪い合うところでは、これまではふたりとも割とクールな感じでしたが、今回は感情むき出しでした。

クロパンだけでなく、エスメラルダも負けじと感情むき出しでコインを奪い返そうとしていました。

そして決定的に違うのは、”奇跡御殿”でのクロパンの表情です。薄目といいますか半目といいますか、これまでとは明らかに目つきが違いました

薄目といっても眠たそうというわけではなく、瞳の奥はギラリと輝いているままで、不気味というか恐ろしいというか、とにかく危ない目つきで、フィーバスとカジモドを容赦なく殺そうとするのです。

私は、”奇跡御殿”は地下の隠れ家なので、そこに居るときには暗闇に対応した目つきになるのかなと思っていました。でも、どうやらそうではなさそうでした。

クロパンは奇跡御殿では何らかの方法で幻覚を見るような、いわば違法なものを体内に取り込んでおり、ダーク・ハイになっている状態をあの目つきで表現しているようです。

ちなみに衛兵に捕らえられていたフィーバスを救い出すときにも、そのダーク・ハイな半目の状態でした。

他ではエスメラルダに対する態度もかなりハッキリと振り切っていたなど、名古屋公演からはクロパンの心情はよりわかりやすくなり、よく理解できたと思います。

今回クロパンを演じた阿部よしつぐさんは、もともと巧い俳優さんですが、クロパンの怪しさとかっこよさが大幅にパワーアップしていてとても良かったです!

 

「天国の光」で階段の上に立つカジモド

1幕フロローによるビッグナンバー「地獄の炎」の前に歌われる、カジモドによる短いソロナンバー「天国の光」。

ここでは、優しい女性のガーゴイルたちが運んできた木製の階段に昇るカジモドですが、これまでは階段の頂上では座ったままで歌っていました。

ですが今回名古屋公演より、最初は座っていますが、途中から階段の上に立ちあがるようになりました

階段の上に立ち上がるタイミングは飯田達郎さんはかなり早い段階で。田中彰孝さんはだいぶ遅め。金本泰潤さんはまた違うタイミングでしたので、カジモド役によって階段の上に立つタイミングは違うようです。

飯田達郎さんの場合ですが「天国の光に」と歌う時には既に立ち上がっていて、優しい顔のまま天を見上げ、片手を天の方に伸ばしており、さらにそのシルエットに優しい光が入りこんでいまして、とても美しいシーンになっていました。

また名古屋公演からこの「天国の光」終わりに拍手が入ることが増えてきました。拍手は客席から鳴るものなので演出変更とは違いますが、まるでカジモドを祝福するようで、良いですね。

 

フィーバスとエスメラルダの”対決”にも変化あり

「醜い男コンテスト」で優勝したことにより、カジモドが町の衆により酷い目にあわされてしまい、責任を感じたエスメラルダがノートルダム大聖堂まで追いかけてきて、エスメラルダがフロローと会話をし、エスメが「ゴッドヘルプ・アウトキャスト」を歌った後、フィーバスとエスメラルダの”対決”シーン。

フィーバスを警戒しているエスメラルダは、まず持っていたナイフをフィーバスの喉元に突きつけます。「おちつけ」と、フィーバス。しかしフィーバスが逆転して、エスメラルダの後ろに回り込んで捕らえる…という展開の後。

これまでは、フィーバスもエスメラルダも割と普通に会話をしていて、突然エスメがフィーバスの腹に肘打ちしてまたまた形勢逆転・・・という流れでした。

名古屋公演からは、エスメの背後にまわったフィーバスは、ちょっとエロティックな雰囲気でエスメラルダに話しかけます。2日目は耳元にキスをしそうなほどでした。一瞬驚くエスメラルダ。

しかしエスメはその気になったふりをして、フィーバスの腕や顔を撫でるようにします

言わば、エスメラルダは逆に小悪魔的にフィーバスに迫りつつ、フィーバスを油断させておいて手が緩んだところで、一気に腹に肘打ち・・・という流れになりました。

色男フィーバスが絶世の美女エスメラルダと急激に接近するわけですから、これまでよりも、より自然で細かく、リアルな駆け引きになったといいましょうか。

ここは短い時間の出来事になりますが、是非注目して見てください。

 

鐘つき堂でのフロローとカジモドの”会話”

1幕冒頭プロローグでは、青年時代のクロード(・フロロー)と弟のジェアンとの”宿命”と、なぜクロードがカジモドを引き取ったのかが明らかになります。

その後、一気に時間が進んで青年になったカジモドは、棲家である大聖堂の鐘つき堂で、友達のガーゴイル(石像)たちと会話を楽しんでいます。

カジモドにとってそれはいつものことでも、それはカジモドの世界のだけのこと。

フロローとっては、カジモドはただの石と会話をしている。独り言を言っているようにしか見えないのです。それもいつものことなのでしょう。

今回はその点がさらに強調されました。

カジモドがガーゴイルと談笑中にフロローが上がってきます。その時点でガーゴイルの声が聞こえなくなります。ガーゴイルとカジモドはまだ会話は続けていますが、カジモドだけがガーゴイルに「無理だよ!」と言いながら笑っています。

フロローに肩を触られて、ガーゴイルの動きは止まり、カジモドは主人であるフロローにようやく気づきます。

これまでと決定的に違うのは、以前はフロローが上がってきてもまだガーゴイル達は騒がしくしていましたが、名古屋公演からはフロローが上がってきた瞬間からガーゴイルの声が聞こえなくなります。

これは、フロローが鐘つき堂に上がってきた段階でガーゴイルの声はフロローはもちろん、観客である我々にも聞こえなくなり、カジモドが独り言を喋っているように見える点が強調されるようになりました。

その後のフロローとカジモドとの会話は、なかなか穏やかで微笑ましいものに変化をしていました。

以前は演者の組み合わせによってかなり違っていたのですが、今回から、カジモドとふたりきりで話すときには、フロローはかなり優しく、家族と話すかのように笑みを浮かべ、気さくに話している印象です。

今回の野中万寿夫さんだけのプランかもしれませんが、カジモドとの”お話”の時間で、「聖アフロディージアス」のヒントとして、カジモドが答えやすいように(優しいヒントを出すかのように)「誰が、イエスさまを守ったのだ?」と言っていました。

そのときには、「うまく答えろよ・・・さぁ、さぁ!」と、カジモドが正解を言うのを期待しているかのような、ワクワクした表情をも浮かべていました。

カジモドは結局答えられないのですが、フロローは悔しそうに椅子をバン!と叩きます。当然、カジはビクッとします。早口でまくしたてて、正解を教えようとするのです。

フロローは、弟のジェアンにはもっと勉強をしてほしかったのに、ジェアンは勉強嫌いでした。

ジェアンの息子で、今ではまるで自分(フロロー)の息子のように育てているカジモドには、一生懸命に勉強を教え、ジェアンのように道からは外れないように、熱心に教育している親のようにも伺えました。

そのカジモドですが、3カジとも、フロローの法衣にキスをする回数が増えており、フロローへの忠誠心は、かなり強調されるようになっていました。

 

「あなたは素敵な友達よ、カジモド」

フロローの手により、火刑にかけられてしまうエスメラルダ。生きたまま火炙りにされるのですから、かなり惨たらしい処刑です。

カジモドはエスメラルダを救出し、迫り来る兵士たちに熱い鉛をぶちまけて勝利しました。

大聖堂の鐘つき堂のベンチに横たわっているエスメラルダ。カジモドはエスメを抱き起こし「ここが君の家だよ」と言います。ここまではこれまで通り。

その後は、今回からエスメラルダは、息も絶え絶えに、ヒーヒーと言って呼吸はかなり苦しそうに、瀕死の声でカジモドと会話します(歌います)。

そして、カジモドの肩に抱かれた状態で「あなたは素敵な友達よ、カジモド」と言い、そのまま息絶えます。

以前は「あなたは素敵な友達よ」と言った後に、カジモドの肩に抱かれていました。繰り返しますが今回は、先に抱かれます。

ただし、飯田達郎さんと田中彰孝さんの場合は、新バージョンの肩に抱かれた状態でしたが、金本泰潤さんの場合はこれまでと同じパターン(肩に抱かれる前)でした。

どちらにせよ、火炙りにされて瀕死の状態のエスメラルダの壮絶な状況を強調する、涙なしには見られないシーンとなっています。

 

2018名古屋公演からの演出変更まとめ

今回の演出変更により、よりリアルになり、ノートルダムの鐘は作品としてよりわかりやすく、深くなったのではないかなと思います。

細かく言えばもっと変更点はあると思いますが、今回は私が気づいた点、主だった点をレポしました。

今回カジモド役だけはトリプルキャスト(飯田達郎/田中彰孝/金本泰潤)で拝見できましたが、フロロー、エスメラルダ、フィーバス、クロパンを始め、アンサンブル、クワイヤとも、変更はほぼなしでした。

今後はキャストによって。あるいはキャストの組み合わせによっては、さらに変わっていく可能性はじゅうぶんにあります。

今回のこの記事で記した変更で決定や確定というわけではないことは、最後にお断りしておきます。あくまでも私が見た時点での解釈や感想ということでご理解くださいね。

いやぁ本当にめちゃくちゃ良かったですし、めっちゃ泣きましたよ。いいんですか、こんなすごいことをやっちゃって…

劇団四季ノートルダムの鐘、めちゃくちゃ進化していますので、あなたも是非ご覧になってくださいね。それでは!

 

2018年9月22日(土)・9月23日(日)・10月8日(月)の出演者 名古屋四季劇場

カジモド:飯田達郎(9月22日) /田中彰孝(9月23日)/金本泰潤(10月8日)
フロロー:野中万寿夫 
エスメラルダ:宮田 愛 
フィーバス:清水大星 
クロパン:阿部よしつぐ

塚田拓也
山田充人 
大空卓鵬 
賀山祐介 
高舛裕一 
平良交一 
手島章平 
吉田功太郎

小川晃世 
村木佑衣 
町島智子 
原田真理

クワイヤ:
永井崇多宏 
坂下良太 
山下泰明(9月22日、23日)/見付祐一(10月8日)
奥田直樹 
青井緑平 
澤村楽人 
高井 治 
山﨑聡一郎

片山美唯 
中山理沙 
平木萌子 
青栁歌奈 
織笠里佳子(9月22日、23日)/谷 明実(10月8日)
北野有希依 
吉田瑛美 
杉山由衣

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