従順な田中彰孝カジモドと強い宮田愛エスメラルダに泣いた観劇レポ:2017年2月3日(金)・2月4日(土)昼公演の感想
宮田愛エスメラルダの悪魔的ダンスに魅了され、迫真演技に胸打たれ涙した
続いて、宮田愛さんのエスメラルダです。
宮田愛さんのエスメラルダは評判通り、かなり良かったんですよ。
とにかく強い!ダンスが素晴らしい!エスメラルダでした。
まず、「タンバリンのリズム」では、カジモドとフィーバスはエスメラルダのことを「天使」と言うのに対し、フロローだけは「悪魔」と言います。(三重唱)
これはいつもフロローに「オッサンひとりだけ悪魔言うとるわ!」と、クスクスポイントだったのですが、いやなるほど。
宮田愛さんのエスメラルダのダンスは本当に悪魔的というか、人間が踊る姿の想像を凌駕していて、「人ってこんな風に踊れるの?」と唸ってしまいます。ダンステクニックがとにかく高く、素晴らしいのです。
ただただ、宮田愛エスメラルダのダンスに釘付けとなり、フロロー達と同じように、観客もエスメラルダの虜になることだけは間違いありません。
このシーンではもうひとりのエスメラルダ役岡村美南さんはそれはゴージャス感満載で登場します。
宮田愛さんは岡村美南さんよりはからだは小さいですが、手や足を大きく動かしてカバーしますから、ダンスがコンパクトに感じたり、スケールダウンを感じたりすることはありません。
むしろ、同等かそれ以上かも。
妖艶で妖美な宮田愛エスメラルダの魔術(ダンス)はそれほど強力なものだと言っておきましょう。宮田愛エスメラルダの「タンバリンのリズム」は必見ですよ!
そして宮田愛さんはかなり気が強いエスメラルダでした。
クロパンがダンスで集めたお金を上納金として持っていこうとすると、一度はタンバリンごと取り返すエスメラルダ。
クロパンは「ルールに従えないのなら出て行け」と言ってまたお金を持っていこうとしますが、宮田愛エスメは「わかった。でもこれだけはもらっとくわ」的な表情で、少しの小銭をわざとクロパンに見せびらかして、出ていきました。
このシーンでは岡村美南さんはクロパンの言うことに大人しく従う(小銭を返す)のに対し、宮田愛さんは言うことを聞くんだけど挑発的(小銭は返さず持っていく)…という違いがありました。
うん、いいんですよ。挑発的な強いエスメラルダ。阿部よしつぐクロパンは「チッ」と舌打ちしていました。うんグッド。
宮田愛エスメラルダの歌声は、ビブラートを効かせてエモーショナルに歌うタイプです。
もし、岡村美南エスメラルダのパワフルな倍音歌唱に慣れていると、宮田エスメの歌声は少しもの足りなく感じたり、高音部分が一部弱く感じてしまうことがあるかもしれません。
でも私は好きな声質ですよ。
「ゴッド・ヘルプ」で、かなり強めに歌っていたのが印象に残りました。
そのゴッド・ヘルプでは「人間は皆、平等な神の子じゃないの?」と、神様に問う歌詞の後に、ツツーッと涙をこぼしたんです…。ええ、そのタイミングで!宮田エスメが。
いや待って、そんなん絶対アカンやつやん。ヤバイやつやん。もらい泣きするやつですやん!(まんまと)
カジモドとの接し方は、より「友だち」っぽく感じました。
私はあのシーンでは岡村エスメの場合、母性を強く感じるのです。
母の愛を知らないカジモドは、生まれて初めて優しくしてくれた女性であるエスメラルダに恋をしますが、同時にお母さんがそばにいるような感覚にもなっているのではと推察します。
宮田愛エスメラルダは、岡村エスメで感じた強い母性は感じませんでしたが、それでもカジモドを何とか助けてあげたいと思う気持ちが強く感じました。
クロパンやフィーバスをコテンパンにした強い宮田愛エスメは、カジモドにはとても優しく「友だち」として接していて、良かったです。
その「トップ・オブ・ザ・ワールド(世界の頂上で)」では、最後の「ふたりで、いる~」の手話をやっていませんでした。カジモドとエスメラルダがやる、手すりをポンポンと叩く、特徴的な手話です。
これはやめてしまったのか。それとも田中カジモドと宮田エスメの場合はやらないのか。その違いについては不明でした。
さて、宮田愛エスメラルダの真髄は2幕、フロローに追い込まれてからです。
それまで一貫していた強いエスメラルダは、もろくも崩れていきます。
バスティーユの独房で二人きりになったエスメラルダとフィーバス。
宮田エスメは最初は落ち着いて話しているのですが、「だけど、それでは助かったことにならない!」で、涙を一気に溢れさせ、顔をくしゃくしゃにして泣き顔になります。
「でも、あなたを救える」で、スッと凛々しい顔に戻る宮田エスメ。
フィーバスが「僕はどうだっていい、君が助かるためにフロローのものになるんだ」と言うと、「絶対イヤ」と言って、また顔をくしゃくしゃにして泣き顔になります。
そこにやってくるフレデリック。
フレデリックとフィーバスの会話中は、また凛とした表情に戻り、なんとか心を落ち着かせているようにも。
そして涙涙の「サムデイ」へ。
フィーバスに後ろから抱きしめられる宮田エスメは、歌いながらどんどん崩れていき、ついには歌えなくなってしまうのです。
エスメラルダ処刑シーン。
処刑台の宮田愛エスメは、無表情で顔をまっすぐに向け、フロローが罪状を読み上げているのを聞いています。
野中万寿夫フロローがいやらしく小声で「昨夜の提案を思い出せ」と言ってきますが、顔を向けることもそらすこともせず、まっすぐに向けたまま。
そしてフロローを静かに睨みつけたまま「プッ」と、フロローの顔にツバを吐きかけます。ジャーン!ドレドレドレ!
しかし超強気なのもそこまで。松明に灯された火の恐怖に怯え、顔がゆがみ、涙がボロボロあふれはじめます。
フロローが自ら火をつけると、「イヤアアアアアア!!!」と、断末魔のような悲鳴をあげます。
このシーンは本当に残酷で、エスメラルダの無念さを考えると、毎回心が痛みます。
岡村美南エスメラルダもここはかなり壮絶です。
宮田愛エスメラルダのこのシーンは、思わず目をそらせてしまいそうになるほどでした。
相当辛いシーンであることは間違いありません。
ちなみに以前、フロローにツバを吐きかけた後に「ニヤリと笑った」という情報を聞いていましたが、私が観劇した2公演ではニヤリとはせず(表情は変わらず)でした。